昨夜私は、初めて『動くひいじいちゃん』を見たのである。
今まで山にある写真と『名物爺さん』だったということを、ニャ王や周りから聞いてその認識だけはあったのだが、
『有名人』だったということを、改めて目の当たりにする事になるのである。
相変わらずマイペースのきなこは、ニャ王と私に関係なく、
自分の好きな場所でウトウトしているのだが、
抹茶はタワーの中段から、二人の様子を伺っていたのである。
よ:「なんかさ・・・すごいよね・・・」
ニ:「そうな・・・ひいじいちゃんも、俺らを見てくれてるさ。」
悲しみでもなく感動でもなく、ましてやプレッシャーでもない表現出来ない涙が、自然にこぼれてきた。
よ:「・・・ティッシュ・・・」
その様子を見守っていた抹茶が、目をショボショボし始めたのである。
よ:「どうした?まっちゃくんも?」
抹茶のもとに行き、私の涙を拭いたティッシュとは別に新しい物を抹茶に差し出すと、
自らティッシュに目を押し当ててきたのである。
一度使った箇所を折り畳み差し出すと、その度に私の顔を見、目を押し当てるのである。
私の顔を優しく見つめる抹茶。
ま:「(かあちゃん)」
よ:「なにぃ・・・一緒に泣いてくれてるの?」
ニ:「頑張らなな。」
家や歴史を繋いでいくことの重みが身にしみる夜。
ひいじいちゃんの事を自慢気に話す、ウダ男の姿が頭をよぎる。
よ:(え゛・・・良いのか?!)
世の中の景気同様、ニャ王と私、そして補佐役の抹茶ときなこで、
歴代最低であろうこの現状を、どこまで回復出来るのであろうか!?
かなりの重圧を感じる私の背後を、木枯らしが駆け抜ける夜なのであった。